📍 はたらく階段|STEP 2
この記事は、札幌市東区の就労継続支援A型事業所ネクサスリンクが、A型事業所から就職までに身につけたいことをまとめたシリーズの1本です。順番や、いま自分がどの段にいるかはシリーズの目次と読み方をご覧ください。全部読まなくて大丈夫です。
先に3行だけ書いておきます。
- これはノルマの話ではありません。達成できなくても、それ自体は問題ではありません
- 大事なのは、できなかったときに「どうしたらできるだろう」と考えることだけです
- 今日やることは、「今日は何をやりますか」と職員さんに聞くだけです。数を決めなくても構いません
これは、ノルマの話ではありません

「目標」「締め切り」と聞くと、追い立てられる感じがすると思います。実際、そう感じる方は多いです。「また数字で管理されるのか」と思ったなら、それは自然な反応です。
ここははっきり書いておきます。A型事業所は、時給での雇用契約です。最低賃金が保証されていて、件数で給料が変わることはありません。出来高払いではないので、10件が6件になっても、その日の給料は同じです。
そのうえで、この記事で言いたいのはこの2つだけです。
- 決めたことが達成できなくても、それ自体は大した問題ではありません
- 大事なのは、できなかったときに「どうしたらできるだろう」と考えることです
そして、これが実際の社会でいちばん効く力です。決めた通りにこなせる人より、外したときに次の手を出せる人のほうが、仕事は長く続きます。
期限を決めて、1日の仕事や1か月の仕事を進めていく。これはどこの職場でも使う力です。A型事業所は、働きながらそれを練習できる場所です。ここで外しても、誰も困りません。むしろ、外して考えたぶんだけ身につきます。
目標を決めるのは、達成するためだけではありません。どこで足りなかったかを見るためでもあります。決めていないと、比べるものがありません。
「何から手をつけていいか分かりませんでした」は、順番の問題です
決まっていないと、こうなります。
- 気づいたら、指示を待つだけで1日が終わっていた
- 「何から手をつけていいか分かりませんでした」で、作業が止まっていた
どちらも、能力の問題ではありません。決まっていないだけです。今日どこまでやるのかが決まっていなければ、順番も出てきません。
だから、先に決めておくだけで、そこは抜けます。
ただし、決めても動けない日はあります。薬が残っている朝、頭に膜が張っている日。それは決め方の問題ではありません。そういう日は、決めたことを翌日に回して構いません。
決めるのは、2つだけです
| いつ | 決めること |
|---|---|
| その日のはじめ | 今日やること。職員さんと確認します |
| 1週間・1か月かかる仕事のとき | タスクを1つずつ洗い出して、それぞれの締め切り |
① その日のはじめに、今日やることを確認する
これは職員さんと決めます。ひとりで決めて背負う話ではありません。
聞き方は、これで足ります。
「今日は何をやりますか」
口で言いにくければ、メッセージで送って構いません。Slack や Chatwork に送っておけば、それで足ります。
そして、朝でなくて構いません。朝がいちばんしんどい方も多いです。動ける時間になってからで足ります。
送っても、その場で返ってこないことがあります。職員さんの手が離せないだけです。返事が来なければ、もう一度送って構いません。それまでは、前の日の続きをしていれば足ります。
数を決めずに始めても構いません
数字を見ると手が止まる、という方は実際にいます。珍しいことではありません。残り件数が一日中頭に居座って、それで動けなくなることもあります。
その場合は、こう言えば足ります。
「今日は、数は決めずに始めていいですか」
または、件数は職員さんに持っていてもらって、自分は「終わったら次」だけもらう形でも構いません。数字を自分で持たない働き方は、普通にあります。
この記事の後半には数字が出てきます。しんどければ、そこは飛ばして構いません。
② 大きい仕事は、タスクに分けて締め切りをつける
1日で終わらない仕事のときは、やることを1つずつ書き出します。そして、それぞれに締め切りをつけます。
「全部で1か月」だけだと、今日何をやればいいのかが分かりません。分けて初めて、今日の分が出てきます。
書き出したものは、職員さんに見てもらえば足ります。自分で決めきらなくて大丈夫です。「この順番と日数で合ってますか」と聞くだけで、たいてい直してもらえます。
量そのものは、面談で決めています
ここも書いておきます。毎日のやり取りは、その日の分を決めるだけです。
「そもそも自分にとって無理のない量はどれくらいか」という大きい話は、サービス管理責任者との面談で決めています。個別支援計画に書いてあるものです。
だから、毎日のチャットで急に量が増える、ということにはなりません。しんどい量が続いているなら、そこは面談で見直せます。サビ管に「量を見直したいです」と伝えてください。
できなかったときが、いちばん練習になります
決めた通りにできない日は、普通にあります。10件と決めて6件で終わる。1か月と決めて、1か月半かかる。よくあることです。
もう一度書きますが、それ自体は大した問題ではありません。給料も変わりません。
大事なのは、そのあとです。
「どうしたらできるだろう」
ここを考えるのが、実際の社会でいちばん求められる力です。アドバイスの記事にも書きましたが、結果が出なかったあとに次を考えられるかどうかで、その後が変わります。
考えるときの材料は、だいたいこの3つです。
| 見るところ | 例 |
|---|---|
| どこで時間を使ったか | 「選別に20分かかっていた」 |
| 何が邪魔だったか | 「途中で別の作業が入って、戻るのに時間がかかった」 |
| 次に変えること | 「選別は先にまとめて済ませておく」 |
1つ出れば十分です。3つ全部を埋めなくて大丈夫です。
思いつかなければ、職員さんに聞いてください。「6件で止まったんですが、どうしたらいいですかね」で足ります。ひとりで答えを出す必要はありません。
そして、書けない日は、そのまま帰って大丈夫です。次に来た日に考えれば足ります。振り返りは、しんどいときにやるものではありません。
間に合わないと分かったら、その時点で言う
締め切りに間に合わせるために、体調を削らないでください。無理をして次の日に来られなくなるほうが、遠回りです。
間に合わないと分かった時点で、こう言えば足ります。
「今日は10件のうち6件で止まりそうです」
これは失敗の報告ではありません。締め切りの前に言うのは、報告そのものです。早く言われたほうが、職員さんも動けます。
そして、締め切りは職員さんと決めたものなので、動かせます。決めたら変えられない、というものではありません。
締め切りが決まると、逆算できます
ここからは数字の話です。しんどい方は、この章と次の章を飛ばして、そのあとの「4段」から読んでください。
締め切りがないと、出てくるのは「早くやろう」だけです。これは指示になりません。何を速くすればいいのか分からないからです。
締め切りがあると、1つあたりに使える時間が出ます。そこから、どこを速くするかが決まります。
例①:商品登録を1日10件
たとえば、その日の作業時間が5時間だとします。
| 1日の目標 | 10件 |
| 作業時間 | 5時間 = 300分 |
| 1件あたり | 30分 |
ここまで出すと、分かることがあります。商品の選別に時間をかけられません。選別に10分使うと、出品に残るのは20分です。逆に、選別を3分で済ませれば、出品に27分使えます。
つまり、選別はさっと済ませて、出品のスピードを上げるという形になります。
これが逆算です。全部を速くするのではありません。どこを速くするかが、数字から決まります。
ただし、どこまで削っていいかは職員さんに確認してください。「選別を雑にしていいか」は、自分で決めることではありません。速さと質のどちらを優先するかは、仕事によって違います。
例②:WordPress のインストール
ウェブ制作の作業でも、同じことをします。作業を分けて、それぞれに時間をつけます。
| 作業 | 目安 |
|---|---|
| ドメインとデータベースの設定 | ◯分 |
| ファイルをアップロードして設定 | ◯分 |
| 動作確認 | ◯分 |
最初は「◯分」が埋まりません。それでいいです。1回やってみて、実際にかかった時間を入れてください。
分けて時間を入れると、どこで時間を食っているかが見えます。「設定は速いのに、動作確認で毎回1時間かかっている」と分かれば、次はそこだけ短くできます。
まとめて「3時間かかりました」だと、どこを直せばいいのか分かりません。分けることに意味があります。
「自分は仕事が遅い」と思っているとき

そう思っている方は多いと思います。
ただ、その中身は手の速さではないことが多いです。たいてい、こうなっています。
- その日にやることが決まっていない
- だから、逆算ができない
- だから、何からやればいいのか分からない
- 結果、手が止まっている時間が長くなる
止まっている時間は、遅さに見えます。周りからも、自分からも、そう見えます。でも、これは手の速さの問題ではありません。決まっていないだけです。
だから、順番はこうなります。
今日やることが決まる → 逆算できる → 何からやるかが決まる → 止まらない
手を速くする前に、決めるところからです。速くしようとしても、何を速くするのかが決まっていなければ、動きようがありません。
それでも「自分は遅い」と思うときは、1つあたり何分かかっているかを測ってみてください。スマホのタイマーでも、紙に開始と終了を書くだけでも足ります。「だいたい20分」で十分です。測ると、速いところと時間がかかるところが分かれます。
そのうえで、特性や体調でどうしても時間がかかる部分は実際にあります。そこは気合いでは変わりません。工夫で追いつかないものは、職員さんと相談して、作業のほうを変えてもらえます。得意なほうに寄せる、時間のかかる部分だけ分担する、別の作業に替える。ひとりで工夫しきる話ではありません。
日によって数字がばらける場合
調子に波があると、同じ作業でも10件できる日と、2件で止まる日が出ます。平均は出ません。
その場合、平均を出そうとしなくていいです。「1か月で◯件」ではなく、その日のはじめに、その日の分だけ決めます。
波があること自体は、量の決め方でも面談でも扱えます。隠さずに伝えてください。ばらつくことを知っていれば、決め方のほうを変えられます。
やり方は、4段です
| 段 | やること |
|---|---|
| 1 | 「今日は何をやりますか」と聞く(今日やること。数は決めなくていい) |
| 2 | 1つあたりに何分かかっているかを測ってみる |
| 3 | 大きい仕事をタスクに分けて、締め切りをつける |
| 4 | できなかったときに「どうしたらできるだろう」を1つ考える |
4段目が、いちばん身につくところです。1〜3段は準備で、練習になるのは4段目です。
ただ、今日は1段目だけで十分です。聞くだけです。
日報の数字が、そのまま材料になります
日報に「出品 ◯件/◯件」と書くのは、この逆算のためでもあります。
「6件/10件」と書いてあれば、次に決めるときの材料になります。10件がしんどいなら、6件に直せばいいだけです。数字がないと、この調整ができません。
そして、できたからといって、自動的に増えることはありません。同じ量のまま続けている方もいます。増やすかどうかは、面談で話して決めます。勝手に上がることはありません。
数字は、責めるためのものではありません。次を決めるための材料です。
そして、その日の量を決めてやりきる話とも、同じところにつながります。
いきなりできなくて大丈夫です
ここまでいろいろ書いてきましたが、いきなり全部できるわけがありません。
明日から毎日聞けるようになる、ということもありません。聞けない日のほうが多いと思います。それで大丈夫です。
やることは1つだけです。少しずつ、習慣として意識づけていく。それだけです。
- 今日は聞けなかった
- 明日も聞けなかった
- 3日目に聞けた
これで十分です。ゼロが1になった時点で、変わっています。
これは、STEP 1 の最後に書いた習慣を1つ切り替える話と同じです。やった回数の分だけ進みます。一度に変えようとすると、全部戻ります。
1か月経ったら、振り返ってみてください
そして、1か月くらい経ったら、1か月前の自分を思い出してみてください。
| 1か月前 | 朝から何をやるか分からないまま、座っていた |
| いま | とりあえず聞いてから、始めている |
この差は、その日その日では見えません。1日単位だと、できた日とできなかった日の差しか見えないからです。1か月まとめて見ると、はじめて動いた分が見えます。
比べる相手は、周りではありません。1か月前の自分です。
そして、1年続けると、もっとはっきり分かります。コツコツやっていれば、必ず変わっています。その日その日では実感できなくても、あとから見れば分かります。
まとめ
- ノルマではありません。A型は時給の雇用契約なので、件数で給料は変わりません
- 大事なのは、できなかったときの「どうしたらできるだろう」。これが社会でいちばん効く力です
- 数を決めずに始めても構いません。件数は職員さんに持ってもらう形でも大丈夫です
- 締め切りが決まると1つあたりの時間が出ます。そこから、どこを速くするかが決まります
- 工夫で追いつかないものは、仕事のほうを変えます。ひとりで工夫しきる話ではありません
- いきなりできなくて大丈夫です。1か月経ったら、1か月前の自分と比べてみてください
札幌市東区の就労継続支援A型事業所ネクサスリンクでは、その日の作業量を職員と確認しながら決めています。ひとりで決めて背負う形にはなりません。
最後に
今日は、「今日は何をやりますか」と聞くだけにしてください。メッセージで構いません。朝でなくて構いません。数を決めなくて構いません。
それだけで、今日の順番が見えます。
そして、届かなかったら「どうしたらできるだろう」を1つ考える。ここは、練習していい場所です。
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