📍 はたらく階段|STEP 2
この記事は、札幌市東区の就労継続支援A型事業所ネクサスリンクが、A型事業所から就職までに身につけたいことをまとめたシリーズの1本です。順番や、いま自分がどの段にいるかはシリーズの目次と読み方をご覧ください。全部読まなくて大丈夫です。
先に3行だけ書いておきます。
- 言葉は、繰り返すと本当にその通りになっていきます。良いほうにも、悪いほうにも
- 「無理」「できません」「自分はこうだから」を繰り返すと、本当にそういう自分になっていきます
- 逆に「こうしていきたい」を繰り返す人は、そちらに動きます。今日は言葉の向きを1つ変えるだけ
これは精神論ではありません。心理学でけっこう調べられている話なので、研究も出しながら書きます。
「無理」を繰り返すと、本当に無理になります

まず、呪いのほうから書きます。こちらのほうが、心当たりがあると思うので。
心理学に「学習性無力感」という有名な研究があります(Seligman & Maier, 1967年)。
何をやっても状況が変わらない、という経験を続けると、あとで「やれば変えられる」状況になっても、もう試さなくなるという結果が出ています。
大事なのはここです。本当はできる状態になっているのに、やらない。「やっても無駄だ」を先に学習してしまっているからです。
これが、言葉で起きるのが「どうせ無理」です。
呪いは、このループで強くなります
- 「どうせ無理」と言う
- だから、試さない
- 試さないので、結果は出ない
- 「ほら、やっぱり無理だった」
- → 1に戻る。ただし、前より強くなっている
言うたびに、証拠が1つ増えます。これが「積み重なる」という意味です。
しかも、増えた証拠は実際に起きたことなので、反論できません。だから、だんだん本当のことに見えてきます。呪いというのは、そういう形をしています。
「自分はこうだから」が、いちばん強い呪いです
同じ呪いでも、強さが違います。
| 言い方 | かかる範囲 |
|---|---|
| 「この作業はうまくいかなかった」 | その作業だけ |
| 「今日はダメだった」 | 今日1日 |
| 「自分はこういう人間だから」 | 自分まるごと、これから先ずっと |
いちばん下は、1回の出来事が、自分の一生の話になっています。
そして、そう言うと、それに合う行動をとるようになります。「自分は続かない人間だから」と言った人は、続けようとしなくなる。そして本当に続かない。言葉が先で、事実があとから追いつきます。
直し方は、範囲を戻すだけです。
「自分はダメだ」→「今日は、この作業でうまくいかなかった」
起きた事実は、どちらも同じです。ポジティブにする必要はありません。範囲を正確に言い直すだけです。
ただし、2つだけ分けておきます
1つめ。特性を人に伝えるのは、呪いではありません。「こういう特性があるので、これは難しいです」は必要な報告です。言わなければ、配慮のしようがありません。呪いになるのは、自分に向けて「だからどうせ無理」と言い続けるときだけです(→特性との付き合い方)。
「今日は無理です、休みます」も同じで、正しい言葉です。休むことは呪いではありません。
2つめ。勝手に来て止まらない考えは、口ぐせではなく症状です。「自分を責める考えが止まらない」「同じ失敗を何時間も思い返す」あたりは、言い方を変えても効きません。主治医に持っていってください。言葉で障害は治るものではありません。
そして、調子が落ちている時期は言い切りが増えます。それは努力不足ではなく、波です。言葉が変わらない月があっても、数えないでください。
魔法の側 ──「◯◯ならできます」という言い方

ここからは、良いほうの話です。覚えてほしい型は、1つだけです。
「◯◯ならできます」
「できない」で止めずに、できる範囲を言う。やることは、これだけです。
そのまま使える言い方
| 場面 | 呪いになる言い方 | 魔法になる言い方 |
|---|---|---|
| 10件が終わりそうにない | 「無理です」 | 「今日は6件ならできます」 |
| やり方が分からない | 「分かりません」 | 「写真を撮るところまでならできます」 |
| 時間がかかっている | 「遅くてすみません」 | 「1件30分あればできます」 |
| 苦手な作業 | 「向いてないです」 | 「梱包のほうが手が動きます」 |
| 電話がしんどい | 「電話は無理です」 | 「メッセージでならできます」 |
| 人がいると集中できない | 「人前は無理です」 | 「ひとりで作業する形ならできます」 |
| 朝が起きられない | 「朝は無理です」 | 「午後からならできます」 |
| 手順が覚えられない | 「覚えられません」 | 「手順書があればできます」 |
| 今日は体調が悪い | 「今日はダメです」 | 「今日は軽い作業ならできます」 |
右も左も、言っている中身は同じです。できないことを伝えている点も同じです。
違うのは、できる部分を1つ足しているかどうかだけです。
なぜ、この言い方が効くのか
理由は2つあります。
1つめ。相手が動けるようになります。
「無理です」で止まると、相手に残る選択肢はやるかやらないかの2つだけです。だから「もう少しがんばって」か「じゃあいいです」しか返ってきません。
「6件ならできます」と言うと、選択肢が増えます。6件でやってもらう、残りを誰かと分ける、明日に回す。相手が考える材料が渡ります。
2つめ。自分が動けるようになります。
「無理です」と言った瞬間、その日の作業は0になります。「6件ならできます」と言えば、6件は動きます。
そして6件終われば、その日は「できた日」になります。「無理だった日」ではありません。ここが、さっきの呪いのループを止めるところです。
数字を入れると、もっと通ります
| 「少しならできます」 | →「6件ならできます」 |
| 「早めに出します」 | →「木曜までに出します」 |
| 「時間がかかります」 | →「1件30分あればできます」 |
数字は、相手の頭の中に予定を作ります。「少し」だと、相手はまだ何も決められません。
詳しくは1日の目標と1か月の目標を決める記事に書いています。
できる範囲が思いつかないとき
「◯◯ならできます」の◯◯が出てこない日もあります。そのときは、これで足ります。
「どこまでならできそうか、一緒に見てもらえますか」
範囲を自分で決めきる必要はありません。「無理です」で終わらせず、相手に渡すところまでで十分です。
目標も、同じ向きにします
言い方だけでなく、自分の中の目標も同じです。
こういう研究があります(Elliot ら, 1997年)。学生の目標を「〜しないようにする」型と「〜していきたい」型に分けて、1学期のあいだ追いかけたものです。
結果ははっきり分かれました。「〜しないようにする」型が多い人ほど、学期の終わりに幸福度が下がっていました。
| 避ける向き | 向かう向き |
|---|---|
| 「ミスしないようにする」 | 「先に確認する」 |
| 「迷惑をかけないようにする」 | 「早めに報告する」 |
| 「怒られないようにする」 | 「分からないところを聞く」 |
| 「休まないようにする」 | 「行ける日を1日増やす」 |
やる作業は同じです。それでも、左は「起きてほしくないこと」をずっと見続けることになります。避けるためには、避けたいものを見ているしかないからです。右は、やることだけを見ています。
言葉を変えると、実際に成績も上がります
もう1つ。スポーツ心理学に、32件の実験をまとめた分析があります(Hatzigeorgiadis ら, 2011年)。自分にかける言葉を変えると、実際の成績が上がるという結果が出ています。
しかも、効きやすいのは細かい手作業と、慣れていない作業でした。覚えたての作業で手が止まるときほど、効くということです。
スポーツの研究なのでそのまま当てはまるとは限りませんが、言葉が本当に手を動かすということは、こうやって測られています。
ただし「私はできる」と唱えるのは、別物です
ここだけ、注意点です。
別の実験(Wood ら, 2009年)で、「私は愛される人間だ」のような自分をまるごと肯定する言葉を繰り返してもらったところ、自分に自信がない人ほど、かえって気分が悪くなりました。
信じていないことを言うと、信じていない理由のほうが頭に浮かぶからです。「私はできる」と言った瞬間に「いや、先週も失敗した」が出てくる。
| 効く | 「どうする」の言葉 ──「先に確認する」「1件だけやる」 |
| 効かない | 「私は◯◯だ」の言葉 ──「私はできる」「私はすごい」 |
つまり、無理に自分を褒めなくて大丈夫です。変えるのはやることの言い方だけで足ります。
やることは、言葉の向きを1つ変えるだけです
| 段 | やること |
|---|---|
| 1 | 「無理」「どうせ」が出たことに気づく(今日やること。直さなくていい) |
| 2 | 範囲を戻す。「自分はダメだ」→「今日は、この作業で」 |
| 3 | 向きを変える。「ミスしないように」→「先に確認する」 |
| 4 | 「こうしていきたい」を1つ持っておく |
1段目だけで十分です。気づけた時点で、ループが1回止まっています。
そして、気づいたあとに落ち込まないでください。「また言った、何年やってるんだ」が来るなら、それは1段目をやめる合図です。気づくことが自分を責めることになるなら、やらないほうがいいです。
思い出せない日が2週間続いても、何も問題ありません。思い出したときが1回目です。
1か月経ったら、振り返ってみてください
いきなりできるものではありません。少しずつ意識づけていくだけです。
1か月くらい経ったら、1か月前の自分を思い出してみてください。「無理です」で終わっていたのが、「無理です。◯◯ならできます」まで言えていたら、それは確実に変わっています。
ただし、調子に波がある方は注意してください。1か月前が良い時期で、いまが落ちている時期なら、比べれば必ず悪く見えます。それは後退ではありません。落ちている時期は、比べないでください。
比べる相手は、周りではなく同じ調子だったころの自分です。
まとめ
- 「無理」を繰り返すと、本当に無理になります。試さなくなり、証拠が増えるからです
- 「自分はこうだから」がいちばん強い呪い。1回の出来事が、一生の話になります
- 「〜しないように」より「〜する」。向きを変えるだけで、続きやすくなります
- ただし「私はできる」の唱和は逆効果。変えるのは、やることの言い方だけです
- 特性を人に伝えるのは、呪いではありません。必要な報告です
この記事で参照した研究
- Seligman, M. E. P. & Maier, S. F. (1967)「Failure to escape traumatic shock」Journal of Experimental Psychology 74(1) ── 学習性無力感
- Elliot, A. J. ら (1997)「Avoidance Personal Goals and Subjective Well-Being」Personality and Social Psychology Bulletin 23(9) ──「〜しないように」型の目標と幸福度
- Hatzigeorgiadis, A. ら (2011)「Self-Talk and Sports Performance: A Meta-Analysis」Perspectives on Psychological Science 6(4) ── 32件の実験をまとめた分析
- Wood, J. V. ら (2009)「Positive Self-Statements: Power for Some, Peril for Others」Psychological Science 20(7) ──「私はできる」の逆効果
札幌市東区の就労継続支援A型事業所ネクサスリンクでは、「できません」で終わった相談も、そこから一緒にやり方を探します。言葉を整えてから来る必要はありません。
最後に
今日は、「無理」「どうせ」が出たことに気づくだけにしてください。
気づけたら、ループが1回止まっています。それだけで、呪いは少し弱まります。
そして、余力がある日に、1つだけ足してみてください。
「◯◯ならできます」
◯◯が出てこない日は、「どこまでならできそうか、一緒に見てもらえますか」でも大丈夫です。ひとりで答えを出さなくていいです。
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札幌市東区の就労継続支援A型事業所ネクサスリンク
































