「これからAIを学ばないと仕事がなくなる」
そんな言葉を耳にして、不安になっている方も多いのではないでしょうか。
札幌の就労継続支援A型事業所「ネクサスリンク」では、利用者さんと一緒に毎日のようにAIを業務で使っています。
ただし、私たちは「AIを勉強しましょう」とは、基本的にはあまり言いません。
AIは、勉強してから使うものではなく、使いながら覚えていくものだからです。
この記事では、ネクサスリンクの現場で実際に行われているAI活用の中身を、利用者さんが作った本物のPOPと一緒にお見せします。「AIで何が学べるのか」を扱った入門記事や、「AIで何が作れるのか」を扱った作品集の記事を読んだ方向けに、「で、実際どう使ってるの?」という現場のリアルをまとめた一本です。
- ネクサスリンクは「AIを勉強しよう」とは言いません
- AIに仕様を投げれば、1日悩んでいたデザインが一瞬
- 利用者さんが作った”実物POP”を見てください
- ネクサスリンクで実際にやっているAI活用 4カテゴリ
- 使っているAIツール ── ChatGPT・Claude・Geminiの使い分け
- 「PC苦手」でも始められる──スタッフ伴走の中身
- 障害特性とAIの”意外な相性のよさ”
- 「AIを使うのはずるい」と思っている方へ
- AIスキルは”一般就労の武器”になります
- さらに上を目指したい人へ──”バイブコーディング”という新しい働き方
- よくあるご質問(FAQ)
- まとめ ── “勉強する”より”使ってみる”が、いちばん早い
- 見学・体験のお問い合わせ
ネクサスリンクは「AIを勉強しよう」とは言いません

ネクサスリンクでは、AIに関する分厚いテキストを開いて、用語を覚えるところから始める、ということは基本的にやりません。
理由はシンプルです。AIは、覚えるより先に手を動かしたほうが、結果的に早く身につくからです。
たとえば、初めて自転車に乗るとき。
「自転車の構造」「ブレーキの仕組み」「ペダルの角度」を本で読んでから乗ろうとする人はいません。
まず誰かに支えてもらって、ペダルを踏んで、何度も転んで、気づいたら乗れるようになっています。
AIもこれと同じです。
ネクサスリンクでは、入所して間もない方にも、最初の日からAIに触ってもらいます。
「今日のお弁当のメニューをAIに聞いてみよう」
「自己紹介の文章をAIと一緒に作ってみよう」
「このチラシのキャッチコピー案をAIに10個出してもらおう」
こんな小さなところから始めて、業務の中で自然に手が動くようになっていきます。
スタッフは横で「次はこう聞いてみたら?」「この言い回し変えてみよう」と一緒に考える役割です。
AIに仕様を投げれば、1日悩んでいたデザインが一瞬

デザインの仕事で、誰もが経験することがあります。
「いいレイアウトが思い浮かばない」
「色の組み合わせを変えるだけで2時間経った」
「気づいたら今日が終わっていた」
一生懸命考えるのは大事です。
でも、悩んでいる時間がそのまま”良いデザイン”につながるわけではありません。
ネクサスリンクでは、デザインを「考える時間」を「選ぶ時間」に変えています。
たとえばPOPを1枚作るとき、これまでは「フォントは何にしよう」「色は何色がいいだろう」「飾りはどこに置こう」と、ゼロから手を動かして悩んでいました。
今はAIに具体的な仕様を渡すだけです。
「3:4の縦長ポスター、グランドオープン用、赤を基調、明るく賑やか、買い物袋のアイコン入り」
こう伝えれば、AIは数秒で複数パターンを提示してくれます。
利用者さんがやることは「どれが一番伝わるか」を選び、必要なら「もう少し落ち着いた色味で」と微調整を伝えることです。
悩んで止まっていた1日が、選んで仕上げる1時間に変わります。
利用者さんが作った”実物POP”を見てください

言葉で説明するより、実物を見ていただくのが一番です。
ここから紹介するPOPは、すべてネクサスリンクの利用者さんがAIを使って作ったものです。
以前はCanvaで一つひとつレイアウトや文字装飾を考えて作っていました。
レイアウトや文字の装飾で悩んで、1枚仕上げるのに半日以上かかることも珍しくありませんでした。
今は具体的な仕様を伝えるだけで、こうしたPOPをポンポン作成できるようになっています。
教えた期間は約10分。ここまで作れるようになったのはわずか1日。2日目にはサンプル集まで作れるようになりました。





これがネクサスリンクの言う「AIを使いながら覚える」の正体です。
マニュアルを読み込んで、AI用語を暗記して、それから現場に出る──ではありません。
現場で必要なPOPを、AIに具体的な仕様を伝えて作ってもらうところからスタートする、それだけです。
ネクサスリンクで実際にやっているAI活用 4カテゴリ

POPはあくまで一例です。
ネクサスリンクでは、毎日の業務全般にAIが組み込まれています。代表的な4カテゴリを紹介します。
① ライティング ── 情報を渡せば、正しい文章が返ってくる
ブログ記事、SNS投稿、商品説明文、メール返信、社内日報。
文章を書くという仕事の比重は、想像以上に大きいものです。
ネクサスリンクの利用者さんは、AIに必要な情報をきちんと伝える練習をしています。
「誰に向けた文章か」「何を伝えたいか」「文章のトーンはどうしたいか」を整理して渡すと、AIから正しい情報が文章の形で返ってきます。
あとは「もう少し優しく」「専門用語を減らして」「200字に圧縮して」と調整するだけ。
1日に何本も書けるようになり、書くことへの心理的なハードルが大きく下がります。
② サイト制作 ── カンプデータ作成までAIで一気に
Webサイトを作るときに最初に出てくるのが「カンプ(完成見本)」と呼ばれるデザインデータです。
これが固まらないと、コーディングにも進めません。
従来はベテランのデザイナーが何日もかけて作るのが普通でした。
今はAIに「業種」「ターゲット」「ブランドカラー」「載せたい要素」を渡すと、カンプ候補が一気に出てきます。
利用者さんはその中から方向性を選び、細部を調整してクライアントに提案します。
「未経験だからWebデザインは無理」と諦めていた方が、AIと一緒なら入口に立てる──それがネクサスリンクの現場で起きていることです。
③ 事務・分析 ── 数字とドキュメントの仕事をAIで
事務作業や分析業務にこそ、AIは強みを発揮します。ネクサスリンクで日常的に行っているのは以下のような作業です。
- サイトのアクセス解析・分析:自社サイトとクライアントワークの両方で、Googleアナリティクスやサーチコンソールのデータを取得し、AIに「どの記事がどんな検索で読まれているか」「改善余地はどこか」を整理してもらいます
- データ入力・書式作成:定型フォーマットの作成、入力ルールの作成、データクレンジングの下準備までAIに任せられます
- PowerPoint資料作成:構成案→スライド原稿→図解の指示まで、提案資料の骨格づくりをAIと進めます
- Excelデータ入力:関数の組み立て方、複数シートの整理、ピボットの設計などをAIに相談しながら進められます
とくにアクセス解析はクライアントワークで重宝されている分野です。「数字を見るのは苦手」という方でも、AIが解説役になってくれるので、数字に向き合うハードルが下がります。
④ 販促・SNS ── POPとリール動画はAIの得意領域
先ほどお見せしたPOP制作に加えて、Instagramのリール動画とサムネイル作成も、ネクサスリンクではAIが大活躍する分野です。
リール動画のサムネイルは、止め絵で「見たい」と思わせる勝負どころです。
AIに「縦長9:16、A型事業所紹介、明るく親しみやすく、ターゲットは20〜40代女性、コピーは『PC苦手でも大丈夫』」と具体的に伝えると、デザイン案が複数提示されます。
その中から選んで微調整し、Instagramへ投稿する──このサイクルが現場で回っています。
業種別の具体的な活用プロセスは業種別AI活用ガイドにもまとめています。
使っているAIツール ── ChatGPT・Claude・Geminiの使い分け

ネクサスリンクでは、特定の1つのAIに固執しません。複数のAIを併用するのが現場のスタンダードです。
- ChatGPT:画像生成、汎用的な文章作成、雑談ベースの相談
- Claude:長い文章の整理、論理的な構成案、コードの相談
- Gemini:Google系サービスとの連携、最新の情報リサーチ
「どのAIが一番か」ではなく「この作業はこのAIが得意」という使い分けを、業務を通して自然に覚えていきます。AIツールそのものの基礎はこちらの入門記事でも詳しく扱っています。
「PC苦手」でも始められる──スタッフ伴走の中身

「AI業務と聞くと難しそう」「自分はパソコンが苦手だから無理」──そう感じる方も多いです。
ネクサスリンクではPC操作が初めての方でも、業務に入れるよう段階的にサポートしています。
最初に覚えるのは、マウスの動かし方とキーボードでの文字入力です。
その次に、AIと”会話”する練習。「今日のお昼ごはん、何がオススメ?」のような気軽な質問から始めて、AIとのやり取りに慣れていきます。
慣れてきたら、業務でAIを使う段階に入ります。
「何を聞けばいいかわからない」という壁にぶつかったときも、スタッフが横で一緒に質問文を作ります。
“答えを教える”のではなく、”答えにたどり着く道筋”を一緒に作るのがネクサスリンクの伴走スタイルです。
もし、PC作業そのものよりも、人と接する仕事や手を動かす仕事に向いている──と感じた場合は、飲食・調理パンなどIT以外の選択肢にも進めるのがネクサスリンクの強みです。
障害特性とAIの”意外な相性のよさ”

実は、AIは障害特性との相性がとても良いツールでもあります。ネクサスリンクの現場で見えてきた、3つのパターンを紹介します。
ADHD型 ── 思いついた順にAIに投げて整理してもらう
頭の中にアイデアがあふれていて、整理が苦手という方。
AIに「思いついた順に話すから、あとで整理して」と伝えて、口頭でも文字でも構わず投げ込んでいきます。
AIが構造化して返してくれるので、頭の中のものが「アウトプットできる形」に変わります。
ASD型 ── AI出力の細部チェックが得意領域
細部に気づく力が強い方は、AIが生成した文章や画像のチェック工程で力を発揮します。
「ここの言い回しが他と統一されていない」「この画像の影の向きがおかしい」と、人間にしか気づけない違和感を拾ってくれます。
AIの量産力と、人間の細部チェック力がペアになると、品質は一気に上がります。
コミュ障・人見知り ── AIは何度聞いても怒らない
「同じことを何度も聞くのが申し訳ない」と感じて、わからないまま進めてしまう方。
AIは何度聞いても怒らないし、嫌な顔もしません。
納得いくまで質問を重ねられる相手が常にいる──これは、コミュ障や人見知りで悩んできた方にとって、心理的にすごく楽な働き方です。
「AIを使うのはずるい」と思っている方へ

たまに聞かれます。「AIに作ってもらうのはずるくないですか?」と。
結論から言うと、まったくずるくありません。
学校のテストでは「自分の力で解く」が正解です。
でも仕事では「正しい答えを、速く、正確に出す」が正解です。ルールが違うのです。
大企業のデザイナーも、有名ライターも、現役のエンジニアも、今や当たり前のようにAIを使っています。
使わないという選択は、競争力を捨てるのと同じになりつつあります。
もちろん、AIに丸投げするだけでは仕事にはなりません。
「誰に」「何を」「どう伝えるか」を考えられるかどうかが勝負です。このあたりは「AIは仕事を奪うものではなく、入り口を広げるもの」でも詳しく扱っているのであわせて読んでみてください。
AIスキルは”一般就労の武器”になります

2026年現在、AI活用力は採用の評価対象になっています。
事務職、Web系、広報、SNS運用、ライティング──どんな職種でも「AIで仕事を速くできる人」は明確にプラス評価です。
ネクサスリンクで身につけたAI活用力は、A型事業所の中だけで使うスキルではありません。
履歴書や職務経歴書に「ChatGPT・Claude・Geminiを業務で日常使用」「AIによるアクセス解析・POP制作・SNS投稿制作の実務経験あり」と書けることは、これからの一般就労で大きな武器になります。
A型事業所で身につけたスキルをどう次の就労につなげるかは、こちらの記事でも紹介しています。
さらに上を目指したい人へ──”バイブコーディング”という新しい働き方

AI活用に慣れて、もう一歩先に進みたい方には、バイブコーディング(Vibe Coding)という働き方が見えてきます。
バイブコーディングとは、自然言語でAIと対話しながらコードを書いていく開発スタイルのことです。
「ボタンを押すと商品リストが3列で並ぶページを作って」と日本語で伝えると、AIがコードを書いてくれます。
動かして、見て、「もう少し青っぽく」「カードに影を付けて」と会話で直していく──これがバイブコーディングです。
ネクサスリンクでは、AI活用が日常になった利用者さんが、知識を使いながらライブ感覚でコーディングをする段階に進んでいます。
札幌のA型事業所で、ここまで踏み込んでAIを業務に組み込んでいる事業所は珍しい存在です。
IT系の一般就労を目指す方にとって、現実的なステップアップの道筋になります。
AIサービスの全体像はAIサービスページ、ITバックオフィス業務の体制はこちらでもまとめています。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. AIやパソコンが苦手でも本当に大丈夫ですか?
はい、まったく問題ありません。マウスの動かし方と文字入力からスタートし、スタッフが横で一緒に進めていきます。AIへの質問の仕方も、最初は一緒に考えます。「教える」のではなく「一緒に試す」が基本スタイルです。
Q2. どんな障害特性の方がAI業務に向いていますか?
ADHD・ASD・コミュ障・人見知り・社会不安傾向のある方など、いずれもAIと相性がよい特性です。記事の中盤で紹介したとおり、それぞれの特性が”AIと組み合わせると強みに変わる”パターンが現場で見えています。逆に「自分はどの型かわからない」という方も、見学や体験を通して向き不向きを一緒に整理していけます。
Q3. AI業務でも賃金は最低賃金が保証されますか?
はい、保証されます。ネクサスリンクは就労継続支援A型事業所のため、すべての利用者さんと雇用契約を結び、北海道の最低賃金が保証された”賃金”を支給しています。AI業務でも飲食業務でも、業務内容によって賃金が変わることはありません。なお、B型事業所で支払われるのは「工賃」と呼ばれ、最低賃金の保証がない仕組みです。この違いはA型を選ぶうえで大切なポイントになります。
Q4. AI関連の仕事は将来の一般就労につながりますか?
はい、明確につながります。AIを業務で使えることは、2026年現在の採用市場で強い評価対象です。ネクサスリンクで身につけた「AIに仕様を伝えてアウトプットを引き出す力」「AIの出力をチェックして整える力」「複数AIを使い分ける力」は、そのまま一般企業でも通用するスキルです。
Q5. 見学では実際にAIを使っている現場を見られますか?
はい、見学では実際の業務風景をご覧いただけます。利用者さんがAIと一緒にPOPを作っているところ、サイトのアクセス解析をしているところ、リール動画のサムネイルを生成しているところなど、現場のリアルをそのままご覧いただけます。気になる業務があれば、その場で体験していただくことも可能です。
まとめ ── “勉強する”より”使ってみる”が、いちばん早い
AIは、これからの仕事に欠かせない道具になっていきます。
でも、その入り口は「分厚いテキストを読み込む」でも「専門用語を暗記する」でもありません。
ネクサスリンクが大切にしているのは、“使いながら覚える”という考え方です。
実際の業務の中でAIに仕様を投げて、出てきたものを選び、整える。
その繰り返しの中で、利用者さんは自然と「AIを仕事の道具として扱える人」に育っていきます。
記事の前半でお見せした実物POPは、その何よりの証拠です。
以前はCanvaで1枚に半日かかっていた利用者さんが、今は具体的な仕様を伝えるだけで何枚もポンポン仕上げています。
同じことが、ライティング・サイト制作・事務分析・販促SNSの4カテゴリすべてで起きています。
そして大切なのは、これがA型事業所の中だけで使うスキルではないということ。
ChatGPT・Claude・Geminiを業務で日常的に使えること、AIの出力を整え・選び・改善できる目を持っていること。
これらは、2026年以降の採用市場であなたの履歴書を強くする”武器”になります。
もし、AIに興味はあるけど一歩が踏み出せない、PC操作に自信がない、自分にできるか不安──そう感じている方は、まずは見学から始めてみてください。
マウスの動かし方から、AIに最初の一言を投げてみるところまで、スタッフが横で一緒に伴走します。
“使いながら覚える”の最初の一歩は、見学のその日から始められます。
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