📍 はたらく階段|STEP 3
この記事は、札幌市東区の就労継続支援A型事業所ネクサスリンクが、A型事業所から就職までに身につけたいことをまとめたシリーズの1本です。順番や、いま自分がどの段にいるかはシリーズの目次と読み方をご覧ください。全部読まなくて大丈夫です。
先に3行だけ書いておきます。
- 自己投資とは、お金・時間・手間をかけて、自分を磨くことです
- 無料で学べるものもあります。ただし、無料の入口から高額な教材へ誘う商売もあります
- だから、リスクの取り方に「ちょうどいい範囲」があります。小話を1つ覚えれば、線が引けます
自己投資とは、何でしょうか

自己投資とは、お金をかけて、自分を磨くことです。
いちばん分かりやすい例は、本を買うことです。千円ちょっと払うと、書いた人が何年もかけて身につけたことが、1冊にまとまって手に入ります。これは「本にお金を使った」のではなく、自分に投資したということです。
そして、かけるのはお金だけではありません。
| かけるもの | 例 |
|---|---|
| お金をかける | 本を買う、講座を受ける、資格を取る、道具をそろえる |
| 時間をかける | 動画で学ぶ、練習する、繰り返しやってみる |
| 手間をかける | メモを取る、振り返る、教わったことを実際に試す |
どの形でも、共通していることが1つあります。前の記事に書いたとおり、自分の中に入れたものは、誰にも取られません。使っても減らず、積み上がる一方です。
それが仕事のレベルを上げて、次の収入につながっていきます。お金の使い方として、いちばん確実な部類です。
無料で学べるものも、あります
「投資」といっても、必ずお金がかかるわけではありません。
教育系の YouTube、図書館、無料の講座。質の高いものが、無料でたくさんあります。まずここから始めるのは、正しい順番です。
ただし、1つだけ知っておいてください。
無料に見えるものが、「入口」のことがあります。
- 無料の動画で、役に立つ話をしてくれる
- 「もっと詳しくは無料セミナーで」と、登録に誘われる
- 個別相談で、熱心に話を聞いてくれる
- 最後に、数十万円の教材や塾をすすめられる
無料の部分で信用させて、少しずつ金額を上げていく形です。よくあります。
無料で学ぶこと自体は、良いことです。やめる必要はありません。ただ、財布を開く瞬間にだけ、線が要ります。
予算が許すなら、本を1冊買ってみてください
そして、無料で学べることには、限りがあります。
YouTube などは、どうしても情報が断片的になります。知りたいところだけをつまむには便利ですが、その代わり、前後がつながりません。「この作業のやり方」は分かっても、「なぜそうするのか」「その前に何をしておくべきか」が抜け落ちます。
一方で、本は体系的に書かれています。1つの物事について、最初から最後まで、順番に並んでいます。断片ではなく、地図が手に入るということです。
ですので、予算が許すのであれば、本を1冊買ってみるのがおすすめです。
分厚い専門書である必要はまったくありません。興味がある本や、薄い本から始めるので十分です。1冊読み切った、というだけで、そのあとの2冊目がぐっとラクになります。
買い方は、1つではありません
「本を買う」といっても、いまは方法がいくつもあります。
| 新刊を買う | いちばん確実。最新の内容が手に入ります |
| 古本を買う | 本屋さんや古本屋さんで。数百円のこともあります |
| 図書館で読む | お金はかかりません。合うかどうかを試すのにも向いています |
| 電子書籍を買う | ダウンロードしてすぐ読めます。場所も取りません |
お金をかけずに始めたいなら、まず図書館で借りてみるのがいいと思います。読んでみて「これは手元に置きたい」と思ったら、そのとき買えばいいです。
いちばんのおすすめは、出版社が出している本です
本を選ぶときに、1つだけ基準をお伝えします。
出版社から出ている本を選んでください。
出版社の本は、編集者が中身を確認し、校閲を通してから世に出ていることが多いからです。書いてあることが正しいか、そのとおりにやって再現できるかを、書いた人以外の目でチェックしているということです。
ここが、個人が売っている高額な情報商材との、いちばん大きな違いです。あちらは、書いた本人以外は誰も確認していません。
ですので、本屋さんに並んでいる本を買うことは、いちばんリスクが少なく、信頼できる情報が手に入る方法だと言えます。
もちろん、本にも合う・合わないはあります。それでも、失うのは数千円です。数十万円の教材に手を出す前に、まずはここからで十分すぎるほどです。
そして、読んだ内容は普段見ているものとつながっていきます。1冊読むと、いつもの作業の見え方が少し変わります。
そこで出てくるのが「リスクの取り方」です
自己投資には、外れもあります。買った本が合わない。受けた講座が期待外れ。リスクをゼロにはできません。
かといって、リスクを避けて何もしなければ、現状のまま変わりません。逆に、取りすぎれば生活が壊れます。
この「ちょうどいい範囲」を、昔から伝わる小話が教えてくれます。
小話「難破船と3人の乗客」
ある船が、長い航海の途中で嵐にあいました。船は大きく流されて、見知らぬ島の岸に乗り上げてしまいます。
船長が言いました。
「これから船を修理する。直り次第、すぐに出港する。風が変われば今日にも出る。いつ出るかは、約束できない」
島を見ると、みずみずしい果物がたくさんなっていて、いい香りがただよってきます。長い航海のあとで、乗客はみんな、新鮮な果物に飢えていました。
ここに、3人の乗客がいました。
1人目 ── 船から降りなかった人
1人目は、考えました。
「船がいつ出るか分からない。降りている間に出てしまったら、この島に取り残される。ここは我慢だ」
その人は、船から一歩も降りませんでした。
たしかに、船には確実に乗れました。でも、果物はひとつも食べられず、空腹のまま、残りの長い航海を続けることになりました。
3人目 ── 島の奥まで行った人
3人目は、思いました。
「せっかくの機会だ。奥へ行けば、もっと大きくて甘い果物があるはずだ。修理には、どうせ時間がかかる」
島の奥へ、奥へと進みました。たしかに、奥の果物は大きくて甘く、おなかいっぱい食べられました。
でも、夢中になっているうちに、船の汽笛は森にさえぎられて聞こえませんでした。浜に戻ったとき、船はもう、水平線の向こうでした。
2人目 ── 船が見える範囲で食べた人
2人目は、島に降りました。ただし、船が見える場所からは離れませんでした。
何度も船のほうを確かめながら、手の届く果物を食べて、いくつかふところに入れて、修理が終わりそうになるとすぐに戻りました。
奥の果物ほど大きくはなかったかもしれません。でも、果物も食べられて、船にも乗れました。3人の中で、この人だけです。
3人を並べると
| 行動 | 結果 | |
|---|---|---|
| 1人目 | 怖くて、船から降りなかった | 船には乗れた。でも飢えたまま |
| 2人目 | 船が見える範囲で食べて、戻った | 果物も船も、両方得た |
| 3人目 | 島の奥まで行って、食べ放題 | 満腹。でも置いていかれた |
この話が言っているのは、これです。
リスクは、ゼロでも取りすぎてもいけない。
「船が見える範囲」で取る。
「船」は、あなたの生活のことです
この話を、自己投資に置き換えると、こうなります。
| 船 | あなたの生活。住まい、食事、体調、通所できていること |
| 果物 | スキル、資格、経験。投資して得られるもの |
| 島の奥 | 戻れなくなる場所。生活費や借金までつぎ込んだ状態 |
3人の乗客は、そのまま3つの生き方です。
- 1人目=何も投資しない人。安全ですが、行動ゼロと同じで、現状のまま変わりません
- 3人目=生活ごと賭けてしまう人。借金して投資する、生活費をつぎ込む、睡眠を削る
- 2人目=戻れる範囲で投資する人。目指すのは、これです
「船が見える範囲」の線引き

具体的には、この4つです。
| 線引き | 意味 |
|---|---|
| ① 生活費に手をつけない | なくなっても生活が変わらない額まで。家賃や食費を削るのは島の奥です |
| ② 借金してまでやらない | 「借りてでも今やるべき」と言われたら、それは船が見えていません |
| ③ 睡眠と体調を削らない | お金だけでなく、時間と体力にも同じ線があります。通所が崩れたら本末転倒です |
| ④ 一度に全部使わない | 小さく試して、良かったら続ける。6割で出して様子を見るのと同じです |
この4つの中にいる限り、投資が外れても、生活は沈みません。失敗しても「果物が1つ酸っぱかった」で済みます。失敗できる範囲で失敗するのが、うまい投資です。
島の奥へ連れて行こうとする人がいます
そして、ここが大事なところです。
世の中には、あなたを島の奥へ連れて行って、お金だけ取ろうとする人がいます。さきほどの「無料の入口から数十万円の教材へ」も、この仲間です。「自己投資は大事」という正しい言葉を、入口に使ってきます。
見分け方は、覚えやすいです。こういう言葉が出てきたら、警戒してください。
| 出てくる言葉 | なぜ危ないか |
|---|---|
| 「絶対」「必ず儲かる」 | 絶対は、ありません。あるなら人に売らず自分でやっています |
| 「今だけ」「今日決めて」 | 急がせるのは、考える時間があると断られるからです |
| 「誰でも簡単に」 | 誰でも簡単にできることは、お金になりません |
| 「先にまとまったお金を」 | 回収できるか分からないものに、先払いの大金は出さない |
対処は、1つだけです。その場で決めない。
「考えたいので、持ち帰ります」
これで断れます。理由は要りません。値段の話と同じで、持ち帰るのは失礼ではありません。まともな相手なら、待ってくれます。待ってくれない相手は、それだけで答えです。
そして、払う前に、誰かに話してください。職員さんでも、ご家族でも、相談支援専門員さんでも構いません。騙しは、ひとりで決めさせるところから始まります。誰かに話した時点で、半分以上防げています。
もし払ってしまったあとでも、あきらめないでください。クーリング・オフなどで取り戻せることがあります。消費者ホットライン(電話 188)に相談できます。恥ずかしいことではありません。
まずは、船のすぐそばの果物から
「じゃあ、何から始めればいいのか」ですが、最初は、お金がほとんどかからないもので十分です。
- この「はたらく階段」を読むこと。無料です。いま読んでいる時点で、あなたはもう自己投資を始めています
- 独学。YouTube と図書館は無料です(入口の見分け方は、もう学びました)
- 資格の勉強。テキスト1冊なら数千円です(この話は、この先の記事で書きます)
- 毎日の仕事そのもの。給料をもらいながら経験が積める、いちばん効率のいい自己投資です
実は、利回りがいちばん高いのは、この無料〜数千円の層です。高い買い物は、収入が安定してからで、まったく遅くありません。
やり方は、3段です
| 段 | やること |
|---|---|
| 1 | お金を使う前に、「なくなっても生活が変わらないか」を1回考える(今日やること) |
| 2 | 迷ったら、払う前に誰かに話す |
| 3 | 小さく試して、良かったら続ける |
1段目だけで十分です。その1回の確認が、「船が見えているか」の確認そのものです。
まとめ
- 自己投資とは、お金・時間・手間をかけて自分を磨くことです。身につけたものは誰にも取られません
- 無料で学べるものもあります。ただし、無料の入口から高額教材へ誘う商売に気をつけてください
- リスクはゼロでも取りすぎてもいけません。「船が見える範囲」で取ります
- 線引きは4つ。生活費に手をつけない/借金しない/体調を削らない/一度に全部使わない
- 「絶対」「今だけ」が出たら警戒。その場で決めず、払う前に誰かに話す
札幌市東区の就労継続支援A型事業所ネクサスリンクでは、「これ、買おうか迷っているんですが」という相談もしてもらって構いません。払う前に、一緒に考えられます。
最後に
島に降りない1人目のままでは、果物は手に入りません。降りていいんです。
ただ、ときどき振り返って、船が見えているかだけ確かめてください。
見えているうちは、どんどん果物を採りに行きましょう。
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