「体調がもう少し戻ってから、就労支援を考えよう」
そう思って、見学の予約を先延ばしにしているうちに、半年が経ち、1年が経ち、それでもまだ”もう少し”が続いている。──そんなふうに感じている方の声を、札幌のA型事業所ネクサスリンクでも、これまでに何度も耳にしてきました。
「先のことを今、不安に考えても何も変わらない」という気づきにたどり着いた方が、口を揃えて言うのは、「今やれることを一つずつ積み上げるしか、結局なかった」ということです。
この記事では、なぜ「完全に回復してから動く」という考え方が、ときに回復そのものを遠ざけてしまうのかを、行動活性化療法やACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)といった心理学の知見から解説します。あわせて、札幌のA型事業所が「体調未回復のままでも始められる」ように、どんな仕組みを用意しているのかをご紹介します。
「体調が戻ってから就労支援を」と感じる気持ちの正体

精神面の不調を抱えながら毎日を過ごしていると、ある時期から「就労支援を利用してみようかな」という気持ちが芽生えてきます。けれど、その次に必ず出てくるのが、「いや、もう少し体調が戻ってからにしよう」というブレーキです。
このブレーキ自体は、ごく自然な防御反応です。体調が万全ではない状態で新しい環境に飛び込んで、結果としてさらに悪化したら、もう動けなくなってしまうかもしれない──その不安は決して非合理ではありません。
「もう少し」が半年・1年と延びてしまう仕組み
問題は、「もう少し戻ったら」という基準が、自分のなかで明確に定義されていない、という点にあります。何時間眠れるようになったら? 外出できるようになったら? 料理を作れるようになったら?──基準を決めないまま、ただ「今より良くなったら」とだけ思っていると、ゴールは常に先送りされ続けます。良くなった日があっても、翌日に体調が崩れれば「やっぱりまだ早い」と振り出しに戻ってしまう。これは怠けているわけではなく、不安が判断軸になっているときに起きる、ごく一般的な現象です。
体調の不安が”準備不足”の理由にすり替わるパターン
もうひとつよくあるのは、最初は「体調が不安だから」だった理由が、いつの間にか「PCが使えないから」「面接が怖いから」「履歴書のブランクが説明できないから」という、別の不安に置き換わっていくパターンです。ひとつの不安を解消すると、次の不安が顔を出す。これは、心が”動かない理由”を探してしまっている状態です。これに気づくと、「不安をぜんぶなくしてから動く」という発想そのものを、いったん見直す必要があることが見えてきます。
「動けるようになったら動く」が逆に回復を遠ざける理由|行動活性化療法の知見

うつ病やうつ状態に対する治療技法のひとつに、「行動活性化療法(Behavioral Activation)」というものがあります。これは認知行動療法に含まれるアプローチで、薬物療法と同程度の効果が示されたという報告もあります(参考:厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法 患者さんのための資料」)。
「気分が戻ったら動く」ではなく「動くから気分が戻る」
行動活性化療法の核心は、「気分が良くなったら行動しよう」という順序を、「行動するから気分が良くなる」という順序にひっくり返すところにあります。うつ状態のときは、何かをやろうとしても気分が乗らないので、つい休んでばかりになります。けれど、休んでばかりいると刺激や達成感が減り、結果としてさらに気分が落ちていきます。この負のループを断ち切るには、「気分とは無関係に、小さな行動を一つ起こしてみる」ことが、もっとも有効だとされています(参考:田町三田こころみクリニック「行動活性化療法」)。ただし、「いきなり大きく動く」のではありません。負担を最小限にした、達成可能な小さな行動を、ステップとして積み上げていく。これがこの療法の重要なポイントです。
札幌の事業所スタッフが現場で見てきた「動き始めた人」の変化
ネクサスリンクで日々利用者の方と接していると、行動活性化療法の知見が現場のリアルとぴったり重なる場面によく出会います。通い始めたばかりの頃は、ほとんどうなだれていて口数も少なかった方が、3か月ほど経つと、ふと「来週はあの作業をやってみたい」と自分から口にするようになる。半年経つ頃には、「もっと新しいことをチャレンジしてみたい」と前向きな言葉が出るようになる。この変化は不思議なことではなく、「小さな行動を継続したから気分が後から追いついてきた」という、行動活性化療法そのままのメカニズムです(関連記事:「気がついたら差がついていた」を生む小さな習慣 ネクサスリンクで伸びる人の働き方)。
「先のことを考えると不安」を扱う心理学の処方箋|ACTの視点

「先のことを今、不安に考えても何も変わらない」──これは、口で言うのは簡単でも、実際にそう思えるようになるのは難しいものです。このテーマにぴったり当てはまる心理学のアプローチが、「アクセプタンス&コミットメント・セラピー(Acceptance and Commitment Therapy、略してACT)」です。第三世代の認知行動療法と呼ばれる比較的新しい流派で、不安や落ち込みといった感情そのものをコントロールしようとせず、「あるもの」として受け入れたうえで、自分の価値観に沿った行動を取ることを重視します。
不安を消そうとしない、横に置く
ACTで強調されるのは、「不安をなくす」ではなく「不安と共に生きる」という姿勢です。不安を消そうと頑張れば頑張るほど、かえって不安に意識が向き、不安が大きく感じられる、という現象は、心理学の研究で繰り返し確認されています(これを「思考抑制のリバウンド効果」と呼びます)。ですから、「不安が消えたら動こう」ではなく、「不安はあっていい。でも、今この瞬間にやれることは何だろう」と問い直すほうが、結果として行動が起きやすくなります。
「今日できること1つ」に集中する考え方
ACTには「マインドフルネス」という考え方も含まれます。これは「今、この瞬間に注意を向ける」というシンプルなアプローチです。将来への不安は、本質的には「まだ起きていないこと」への予測です。一方、「今日できること」は、文字どおり今日、自分の手で扱える具体的な事柄です。意識を未来から今日に戻すだけでも、不安に振り回される時間は少しずつ減っていきます。
A型事業所での1日──たとえば朝、決まった時間に通所する、決まった作業を3時間こなす、スタッフに一言「今日はちょっと疲れました」と伝える──こうした小さな”今日”の積み重ねこそ、まさにACTが推奨する実践そのものです。
札幌のA型事業所が「体調未回復でも始められる」3つの仕組み

「動いたほうがいいのはわかった、でも、フルタイムの仕事は無理」──そのとおりです。だからこそ、就労継続支援A型事業所という制度があります。A型事業所は、雇用契約を結んで最低賃金以上を受け取りながら働く場ですが、一般就労とは違って、体調と相談しながら勤務時間や業務を調整できる仕組みが、制度として組み込まれています。なかでも、ネクサスリンクで特に大切にしているのが、次の3つの仕組みです。
1日4時間からの短時間勤務と通院日への配慮
A型事業所の標準的な勤務時間は、1日4〜5時間、週4〜5日です。一般就労の8時間勤務に比べると、体への負担が大きく違います。ネクサスリンクでは、通所のしやすさを最優先に設計しており、たとえば通院日には半日勤務に切り替えたり、午前中だけの勤務にしたりすることが日常的に可能です。「通院があるから利用を諦めよう」ではなく、「通院しながら通える」前提の事業所だと考えてください。
体調連絡=即休めるルール
体調に波がある時期に一番つらいのは、「休む連絡を入れるかどうかで悩む」ことです。「これくらいで休んでいいのか」「迷惑をかけるのではないか」と考えているうちに、出勤も休みも決断できず、結局1日中ベッドの上で消耗してしまう。ネクサスリンクでは、体調が悪い日の連絡は「申し訳なさを感じなくていい」というスタンスを徹底しています。LINEで一言「今日は休みます」と送ってもらえれば、それで完結します。理由を細かく問われたり、診断書を要求されたりすることもありません。
スタッフが個別に伴走する個別支援計画
A型事業所には「個別支援計画」という、利用者一人ひとりの目標や配慮事項を整理する制度的な仕組みがあります。ネクサスリンクでは、これを単なる書類ではなく、3〜6か月に一度、スタッフと一緒に「今のペースで無理はないか」「次に少しだけチャレンジしてみたい業務はあるか」を話し合う場として活用しています。”今やれること”を一人で決めなくていい、というのは、体調に不安がある方にとって、想像以上に大きな支えになります。
体調と相談しながら始める、最小の一歩の作り方

ここまで読んで「理屈はわかった、でも実際に何から始めればいいのか」と感じている方のために、最小の一歩の作り方を整理します。
「見学に行く」をさらに小さく分ける
「見学に行く」というアクションは、案外大きな一歩です。なので、これをもう少し細かく分けてみます。
- 公式サイトのよくある質問ページを読む
- 通所ルートを地図で見るだけ
- 電話せず、メールやLINEで質問だけ送る
- 質問の返事を読む
- 見学日を決める
- 当日、駅まで行ってみる
- 事業所のドアの前まで行ってみる
このように分けると、「見学の予約」のさらに何ステップも手前に、もっと負担の少ない一歩があることがわかります。今日のあなたが踏み出せる一歩は、必ずこの中のどこかにあります。
札幌・東区役所前駅直結という移動の小ささ
体調が不安なときに、移動の負担は思っている以上に大きな壁になります。乗り換えがある、駅から事業所まで雪道を歩く、通勤ラッシュに巻き込まれる──これらはすべて、見学の前に心を折りに来る要素です。ネクサスリンクは、地下鉄東豊線「東区役所前駅」直結のセレスタ札幌内にあります。地下から建物に直接入れるため、冬の札幌でも雪や寒さに触れずに通所できます。通所そのものが負担になりにくい、というのも、体調未回復の方にとっては小さくない安心材料です。
主治医に相談という「ひとり判断」の回避
最後にもうひとつ。「就労支援を始めるかどうか」を、自分ひとりで判断しないでください。主治医に「A型事業所の見学に行ってみようと思っている」と相談すれば、「今のあなたの体調なら、まずは見学だけで」「短時間からなら大丈夫そう」といった、専門家の視点からの後押しが必ずもらえます。これは”判断を放り投げる”ことではなく、”判断を一人で抱え込まない”ことです。なお、自分を責めてしまう癖がある方は、「自分なんかが働いていいのだろうか」と思ってしまうあなたへ。札幌の就労支援スタッフからの手紙もあわせてご覧ください。
まとめ|”完璧な回復”を待たずに、今日できることを1つ積む
「精神面の不調でずっとうなだれていた」状態から、「もっと新しいことにチャレンジしたい」と思えるようになるまでには、間違いなく時間がかかります。けれど、その時間は、何もしないでただ過ごす時間ではなく、「今日やれることを1つ積んだ日々」の積み重ねでできています。
行動活性化療法もACTも、現場の支援経験も、いずれも同じことを伝えています──「気分が戻るのを待ってから動く」のではなく、「動くから気分が戻る」のだ、と。
体調が万全ではないあなたが、今日できる一歩は、たとえばこの記事を最後まで読むことだったかもしれません。それで十分です。次の一歩は、明日のあなたが決めれば大丈夫です。ネクサスリンクは、その小さな一歩を、いつでも横で見守れる場所として札幌・東区にあります。完璧に回復してから来てくださいとは、一度も言ったことがありません。
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