見学に行ったA型事業所で、ずらりと並んだ机の上を封入袋やシール貼りの台紙が埋め尽くしていた。職員に「他の仕事もあるんですか」と聞いたら「基本はこの作業ですね」と返ってきた——そんな体験をして、なんとなく嫌な気持ちのまま家に帰った札幌の方は、決して少なくないと思います。
ネットで「A型事業所 内職 つまらない」「A型 封入作業 ばかり」と検索すると、不満の声がぞろぞろ出てきます。でも、なぜそうした事業所が生まれているのか、構造そのものに踏み込んで書かれた記事はあまり見かけません。札幌で実際に通う事業所を選ぶ立場からすると、表層的な「悪い事業所もあるよ」という話より、「どういう力学でそれが起きるのか」を知っておくほうが、見学のときの目つきが変わります。
この記事では、A型事業所の報酬構造と「内職しかさせられない事業所」の関係を、現場の経営事情にまで踏み込んで整理します。最後に、札幌で見学に行ったときに業務ローテーションをどう確認すればいいのか、具体的な質問の言い回しも添えました。
札幌のA型事業所で「内職しかさせない」状態が起きる根本の理由

まず前提として、A型事業所は雇用契約を結んで最低賃金以上を支払う仕組みです。北海道の最低賃金は1,070円(2025年10月時点)で、利用者一人あたりに毎月十数万円の人件費が発生します。事業所側はこの賃金を、利用者が行う生産活動の売上で賄うのが原則です。
生産活動の売上が賃金を下回ると報酬が減点される
2024年4月に施行された令和6年度の障害福祉サービス報酬改定で、A型事業所の評価方法が大きく変わりました。基本報酬を決める「スコア方式」と呼ばれる7項目評価のなかで、生産活動収支の比重が引き上げられたのです。具体的には、3期連続で生産活動収支が利用者への賃金総額を下回ると、スコア20点が減点される仕組みが導入されました。
スコアの減点は、事業所が国保連から受け取る基本報酬の単価を直接押し下げます。改定前から、全国のA型事業所で生産活動の収益が賃金を上回っているのは2〜3割と推計されており、改定はこれを是正する方向に強く舵を切ったかたちです。国が事業所に向けて発しているメッセージは「『預かるだけ』のA型は卒業し、利用者の労働時間と賃金、事業の自立性を上げてください」というものです。出典は厚生労働省 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定関連資料です。
「単価が安くても確実に受注できる仕事」へ逃げ込む構造
では、なぜそれでも内職や単純作業の事業所が残るのか。経営側の事情を率直に書くと、内職系の仕事は「営業しなくても継続的に発注が来る」「教える手間がかからない」「人を入れ替えても作業品質が崩れない」という三拍子が揃っているからです。封入、シール貼り、検品、ボールペン組み立て、簡単な梱包。利用者を集めれば、その日から売上が立ちます。
ただし単価は低い。下請けに下請けを重ねた末端の仕事なので、1個あたりの工賃は数銭から数円というレベルも珍しくありません。20人の利用者で1日100万円の賃金を支払うために、その何倍もの売上を内職だけで作るのは、現実的にはほぼ不可能です。だから多くの内職中心の事業所は、給付費(国保連からの基本報酬)で赤字を埋める運営になっています。報酬改定はその構造そのものを問題視しています。
札幌でも閉鎖が増えている背景
2024年4月以降、全国でA型事業所の閉鎖が一気に増えました。札幌でも例外ではなく、生産活動が赤字のままだった事業所が運営継続を断念するケースが続いています。利用者側からすると、突然「来月で閉所します」と告げられる事態が現実に起きるということです。A型事業所が潰れる前兆7つのサインでも触れていますが、この流れは少なくともこの数年は止まらないと見ておいたほうがいいです。
内職ばかりのA型事業所と業務が多様な事業所では何が違うのか

同じA型事業所という看板を掲げていても、業務の中身は事業所によって大きく違います。札幌で見学を始めると、その差は1日で実感できると思います。違いを生んでいるのは、ほとんどの場合「営業力」と「育成設計」の二つです。
営業先を自分たちで開拓しているかどうか
多様な業務を抱える事業所は、自分たちで企業に営業に行きます。「うちで動画編集できます」「ECの商品登録を引き受けます」「データ入力を1人月で◯円で受けます」と、自前で案件を取りに行く。元請けに近い位置で仕事を受けるので、単価が高く、内容にも幅が出ます。
逆に、待ちの姿勢で内職を流してもらうだけの事業所は、案件のバリエーションが増えません。営業を担う職員が一人もいないというのは、A型事業所においては結構な構造的な問題なのですが、見学では見えにくい部分です。「誰が仕事を取ってきていますか」と聞いてみると、雰囲気で答えるのか、具体的な企業名と営業手段を答えるのかで判断できます。
業務ローテーションの設計があるかどうか
もう一つの違いが、利用者がステップアップできる業務の階段が設計されているかどうかです。たとえば、最初はデータ入力から入って、慣れたら商品ページ作成、その先はEC運営の補佐、さらに進めば動画編集や撮影業務、というように、業務の難易度と本人の希望に応じて移動できる仕組みがあるかどうか。
これは事業所側の「育成設計」の問題で、職員が一人ひとりの個別支援計画にどこまで踏み込んでいるかに直結します。EC運営の実態やIT系事業所の業務内容を見ると、業務の幅と階段がある事業所のイメージがつかみやすいと思います。
軽作業がすべて悪いわけではない
誤解されないように補足すると、軽作業や内職そのものが悪い仕事というわけではありません。集中して手を動かす作業が合う方、対人ストレスから離れて黙々と取り組みたい方には、軽作業中心の事業所が合うこともあります。問題は「他の選択肢が用意されていない」ことであって、軽作業を選ぶこと自体は本人の合理的な判断です。軽作業のA型事業所に物足りなさを感じたらでは、その線引きを別の角度から書いています。
札幌のA型事業所見学で確認すべき業務ローテーションの質問

見学に行く前に決めておきたいのは、「今日の作業風景」だけで判断しないということです。たまたまその日が内職の納期前で、利用者全員が単純作業に集中している日かもしれません。1日の風景は氷山の一角なので、職員に直接聞いて確かめる必要があります。
過去半年に発生した業務の種類を聞く
「この半年で利用者の方が取り組まれた業務には、どんな種類がありましたか」と聞いてみてください。ここで具体的に5種類以上の業務名が即答で出てくれば、業務の幅は確保されています。逆に「主に封入と検品ですね」とだけ返ってくる場合は、その答えがほぼすべてです。
業務の決め方と異動の頻度を聞く
「業務はどう決まりますか」「途中で別の業務に移ることはできますか」も大事な質問です。配属が固定で動かない事業所では、最初に振られた業務をやり続けることになります。本人の希望や適性で異動できる柔軟性があるか、半年ごとに見直す機会があるか、ここを確認しておくと入所後のミスマッチが減ります。
1年通った人の業務がどう変化したかを聞く
これは少し踏み込んだ質問ですが、効果は大きい。「ここで1年通われた方の業務は、入所時と比べてどう変わりましたか」と聞くと、その事業所が育成にどこまで意識を向けているかが見えます。「特に変わりません、同じ作業を続けています」と「最初はデータ入力から始まって、今は商品撮影と編集を担当しています」では、職員が利用者の成長に投資しているかどうかが分かります。詳しい質問リストは見学質問テンプレ15にもまとめてあります。
札幌でA型事業所を選ぶときに業務内容で見るべき視点

業務内容を判断軸にするときに、つい「やりたい仕事があるか」だけで決めてしまいがちですが、もう少し広い視野で見たほうがいいです。やりたいと思っていた仕事が、実は自分の特性と合わなかったというのはよくある話で、業務の幅がある事業所のほうが軌道修正ができます。
自分の体調の波と業務難易度のマッチングを意識する
調子が悪い日に難しい業務に取り組めるか、調子がいい日に挑戦できる業務があるか。両方の余白がある事業所だと、無理せず続けられます。固定の業務しかないと、調子の波がそのまま勤怠の波になりやすい。
一般就労につながる経験値が積めるかを見る
A型事業所で身につけた経験は、一般就労への階段になります。A型で身につけたスキルは将来に活きるのかでも触れているように、業務内容によってその後の職歴や履歴書の書き方が変わります。封入作業1年と、EC運営1年では、転職市場での見え方が違うのは事実です。これは将来の選択肢にも直結する話なので、入る前に意識しておく価値があります。
事業所の経営状態にも目を向ける
業務内容と経営状態は実は連動しています。営業力があって受注単価の高い仕事を持っている事業所ほど、経営が安定しています。逆に、内職中心で単価の低い仕事しかない事業所は、報酬改定の影響で経営が苦しくなりやすい。助成金目当てを見抜く7つのポイントや指定取消の事例と合わせて読むと、業務内容と運営姿勢の関係が立体的に見えてきます。
札幌で内職以外の業務がある事業所を選ぶための最後の整理

「内職しかさせない」と言われる事業所は、悪意で利用者を縛っているわけではなく、構造的にそれ以外の仕事を持てない事情があります。営業力がなく、育成設計もなく、給付費頼みで運営している。だから利用者から見ると、毎日同じ作業を繰り返す日常になる。これは2024年の報酬改定で国が問題視している構造そのものです。
札幌で事業所を選ぶ立場としては、見学のときに「今日の作業」だけを見ないこと、過去半年の業務種類と異動の柔軟性を聞くこと、1年通った人の業務がどう変わったかを確かめることの3点を意識しておくと、入所後のミスマッチを大きく減らせます。
ネクサスリンクでは、EC運営、Webデザイン、データ入力、動画編集、経理サポートといった複数のIT系業務と、バックヤード業務のキッチン業務を組み合わせて、利用者一人ひとりの希望と適性に合わせた業務配分を組んでいます。今の事業所に物足りなさを感じている方、これから札幌で見学を始める方、どちらの立場でも見学だけは歓迎です。気軽に申し込んでください。
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