朝、家を出る。地下鉄に乗る。事業所の最寄り駅が近づいてくる。
仕事がイヤなわけじゃない。作業自体はできる。でも、あの人がいると思うと、足が重くなる。
「今日も何か言われるのかな」「また空気が気まずくなるのかな」──そんなことばかり考えてしまう。
もし今、あなたがこんな気持ちでこの記事を開いているなら、まず伝えたいことがあります。
A型事業所の人間関係で悩んでいるのは、あなただけではありません。そして、それはあなたのせいではありません。
この記事では「頑張って乗り越えよう」とは言いません。A型事業所で人間関係のつらさを感じているあなたが、自分を守るための距離の取り方、そして改善しないときの選択肢を一緒に考えていきます。
なぜA型事業所は人間関係の悩みが起きやすいのか

まず知っておいてほしいのは、A型事業所は構造的に人間関係の悩みが生まれやすい環境だということです。
あなたの対人スキルが低いわけでも、あなたの性格に問題があるわけでもありません。
少人数の空間で毎日同じ顔ぶれ
A型事業所は、多くの場合10人から20人程度の利用者が同じ空間で働いています。一般企業なら部署を異動する、フロアを変えるといった「物理的な距離の変更」ができますが、A型事業所ではそれが難しい場合がほとんどです。
毎日同じ部屋で、同じメンバーと顔を合わせる。少人数だからこそ、一人ひとりの存在感が大きくなります。苦手な人がいたとしても、目に入らない日がない。それだけで消耗するのは、ごく自然なことです。
札幌の場合、冬場は特にこの傾向が強くなります。11月から3月にかけての長い冬、休憩中に外に出て気分転換することも難しく、限られた空間の中で過ごす時間がどうしても長くなります。寒さが人間関係のストレスを増幅させている面は、確実にあるのです。
障害特性のぶつかり合い
A型事業所には、さまざまな障害特性を持つ利用者が集まっています。
音に敏感な方と、声が大きくなりやすい方。ルールを厳格に守りたい方と、柔軟にやりたい方。一人で集中したい方と、周囲と話しながら作業したい方。
どちらが「正しい」「間違い」ということではなく、特性同士の組み合わせで摩擦が起きてしまうのです。頭では「お互いさまだ」とわかっていても、それが毎日続くと、心が先に限界を迎えます。それは弱さではなく、心の自然な反応です。
「仲良くしなきゃ」という見えないプレッシャー
A型事業所は職場であると同時に、福祉サービスの場でもあります。そのため、利用者同士の距離が一般的な職場よりも近く、「みんな仲間」「助け合おう」という雰囲気が生まれやすい場所です。
この空気感は居心地の良さにつながることもありますが、苦手な人がいるときには逆にプレッシャーになります。「仲良くしなきゃいけないのに、自分だけできない」と感じてしまう。
でも、仲良くなれないことは悪いことではありません。職場に来ているのですから、業務が滞りなく進めばそれで十分なのです。全員と仲良くなる義務は、誰にもありません。
「つらい」と感じる場面は人それぞれ。あなたはどれに近いですか?

ひとくちに「人間関係がつらい」と言っても、その中身は人によって違います。あなたの「つらい」がどんな場面から来ているのか、少し立ち止まって考えてみてください。
特定の人の言動がきつい
口調がきつい人がいる。何かにつけてマウントを取ってくる人がいる。聞こえるように陰口を言う人がいる。
こういう場面に直面したとき、周囲から「あの人は障害があるから仕方ないよ」と言われることがあります。でも、その一言があなたの苦しさを消してくれるわけではありません。むしろ、「我慢するしかないのか」と追い詰められた気持ちになることもあるでしょう。
あなたが感じている不快さは、正当なものです。相手に障害があるかどうかと、あなたが傷ついているかどうかは、別の話です。
グループの輪に入れない
休憩時間になると、いくつかのグループに分かれて会話が始まる。自分はそのどこにも入れない。話しかけるタイミングがわからない。すでにできあがった関係の中に、後から入っていくのが怖い。
一人でいることが平気な日もあります。でも、笑い声が聞こえてきたとき、ふと寂しさが込み上げてくる日もある。その繰り返しの中で、少しずつ「自分はここにいていいのかな」という気持ちが大きくなっていく。
そう感じるあなたの心は、何もおかしくありません。
異性との距離感に困る
好意を向けられて戸惑っている。距離を詰められて怖いと感じている。でも、相手を傷つけたくないから断れない。事業所のスタッフに相談するのも気が引ける。
こうした悩みは、一人で抱え込まないでほしいのです。後ほどお伝えする相談先に、遠慮なく話してください。
スタッフ(職員)との関係
人間関係の悩みは、利用者同士だけではありません。スタッフの対応に傷つくこともあります。
勇気を出して「○○さんとの関係がつらい」と相談したのに、「うまくやってね」と軽く流される。話を最後まで聞いてもらえない。そういう経験をすると、「相談しても意味がない」と感じてしまうかもしれません。
でも、すべての事業所がそうではありません。利用者の声を真剣に受け止め、環境を調整する努力をする事業所は存在します。今の場所で声が届かなかったとしても、「相談すること自体が無駄だ」とは思わないでほしいのです。
人間関係がつらいとき、すぐにできる「自分の守り方」5つ

ここからは、明日からでもできる具体的な方法をお伝えします。人間関係を「良くする」ことではなく、「自分を守る」ことにフォーカスしています。
① 物理的な距離を取る
苦手な人との距離は、まず物理的に取ることが最も効果的です。
席の配置を変えてもらう、作業グループを分けてもらう。これは「わがまま」ではありません。障害者総合支援法に基づく「合理的配慮」の考え方の中には、環境の調整も含まれています。
伝え方にはコツがあります。「○○さんと離れたいです」と言うと角が立ちやすいので、「この席のほうが作業に集中しやすいです」「窓際のほうが落ち着きます」というように、自分の作業環境の希望として伝えてみてください。結果的に苦手な人と距離が取れれば、それで十分です。
② 休憩時間の過ごし方を変える
人間関係のストレスが一番大きくなるのは、実は作業中ではなく休憩時間だという方が多くいます。
休憩時間に一人で過ごすことに罪悪感を持つ必要はまったくありません。イヤホンで音楽を聴く、本を読む、スマホを見る。「一人の時間」を意識的に作ることは、立派なセルフケアです。
札幌では、夏場なら事業所の近くのベンチや公園で外の空気を吸うだけでもリフレッシュになります。冬場は外に出るのが難しいので、建物の別フロアやロビー、エレベーターホールなど「いつもと違う空間」を見つけておくと、気持ちの切り替えがしやすくなります。
③ 苦手な人との「台本」を決めておく
苦手な人に話しかけられたとき、何を言えばいいかわからなくてパニックになる。そんな経験はありませんか。
あらかじめ「台本」を用意しておくと、心の負担がぐっと減ります。
話しかけられたら「そうなんですね」と相づちだけ打つ。長く話しかけられたら「すみません、今ちょっと手が離せなくて」と言う。あいさつと業務連絡だけの関係で十分です。
人間関係は「深くなければいけない」わけではありません。浅くても穏やかな関係は、十分に「良い関係」です。
④ サービス管理責任者に具体的に相談する
「つらい」という気持ちを伝えるとき、少しだけ工夫をすると伝わりやすくなります。
「人間関係がつらいです」だけだと、スタッフ側も何をどうすればいいかわからないことがあります。「○○の場面で、△△と言われたとき、こう感じた」というように、場面と感情をセットで伝えてみてください。
A型事業所のサービス管理責任者は、障害者総合支援法により利用者の相談に応じる義務があります。「忙しそうだから」「大したことじゃないかもしれないから」と遠慮する必要はありません。あなたの困りごとは、事業所が対応すべきことです。
相談した内容と日時をメモしておくことも大切です。万が一、相談しても改善されない場合に、記録が次のステップにつながります。
⑤ 「今日は無理」の日は休んでいい
人間関係のストレスで朝起きられない。事業所に行こうとすると胸が苦しくなる。そんな日があったら、それは心が「今日は限界だよ」と伝えてくれているサインです。
1日休むことは「逃げ」ではなく「回復」です。
体を壊してまで、心をすり減らしてまで、通い続ける義務はどこにもありません。「休んだら迷惑をかける」と思うかもしれませんが、あなたが壊れてしまうほうが、長い目で見ればずっと大きな損失です。
それでも改善しないときに考えてほしいこと
ここまでの方法を試しても状況が変わらないとき、あるいは試す気力すらなくなっているとき。そんなときには、「今の場所で頑張り続ける」以外の選択肢も考えてみてください。
相談支援専門員(計画相談)に話す
あなたがA型事業所を利用するとき、「サービス等利用計画」を作成してくれた相談支援専門員がいるはずです。
相談支援専門員は、事業所のスタッフとは独立した立場にいます。事業所には言いにくいことでも、この人には話せることがあるかもしれません。「事業所の人間関係がつらくて、続けるか迷っている」と伝えてみてください。あなたの気持ちを聴いた上で、一緒に次の選択肢を考えてくれます。
相談支援専門員の連絡先がわからない場合は、お住まいの区の保健福祉課に問い合わせれば教えてもらえます。
事業所を変えるという選択肢
「事業所を変える」というと、大げさに感じるかもしれません。「せっかく慣れた場所なのに」「また一から始めるのが怖い」という気持ちもわかります。
でも、事業所を変えることは「逃げ」ではありません。「自分に合った環境を選ぶ」という、あなたの権利です。
札幌市内にはA型事業所が100か所以上あります。事業所の雰囲気、利用者の層、作業内容はそれぞれ異なります。今の場所が合わなかったとしても、あなたに合う場所はきっとあります。「ここしかない」と思い詰める必要はないのです。
事業所の変更について詳しくは、こちらの記事もあわせてご覧ください。
関連記事: 今のA型事業所が合わないと感じたら?別のA型事業所に変えるという選択肢を札幌の事業所が解説
つらさが続くなら、心の専門家の力も借りてほしい
人間関係のストレスが長く続くと、心だけでなく体にも影響が出てくることがあります。
夜眠れない。食欲がなくなった。朝になると動悸がする。事業所のことを考えるだけで涙が出る。──こうした症状が出ているなら、主治医やカウンセラーに「事業所の人間関係のことで悩んでいる」と伝えてください。
「こんなことで相談していいのかな」と思う必要はありません。人間関係のストレスは、れっきとした「心の負荷」です。
不安や緊張が強い方は、こちらの記事も参考になるかもしれません。
関連記事: 札幌で不安障害・パニック障害をお持ちの方へ|安心して働ける環境づくりを大切にしています
「人間関係が楽な事業所」を見極めるポイント

今の事業所に留まる場合も、新しい事業所を探す場合も、「人間関係のストレスが少ない環境」を見極める視点を持っておくことは役に立ちます。
見学・体験のときに見てほしい3つのこと
事業所を見学したり体験したりするとき、作業内容や立地だけでなく、次の3つに注目してみてください。
利用者同士の雰囲気はどうか。 会話が自然に行われているか、逆にピリピリした空気がないか。作業中の表情が硬すぎないか。完全に無言すぎる空間も、逆に気を遣う場合があります。
スタッフが利用者の間に入っているか。 トラブルの芽に気づいて声をかけているか、それとも事務作業に没頭して利用者のことを見ていないか。スタッフの目が行き届いている事業所は、問題が小さいうちに対処できます。
休憩時間の過ごし方に自由があるか。 全員で一斉に同じ場所で過ごすスタイルなのか、一人で過ごすことが自然に許されている空気なのか。これは人間関係のストレスに直結するポイントです。
IT・デスクワーク系は人間関係の距離が保ちやすい
作業の種類によって、人間関係のストレスの大きさは変わります。
パソコンに向かって作業するIT系やデスクワーク系の仕事は、自分の画面に集中する時間が長いため、無理に会話をする場面が少なくなります。作業中は「一人の世界」に入れるので、人間関係で消耗しにくい環境と言えるでしょう。
札幌でもIT・Web系の作業を取り入れるA型事業所は増えてきています。今の事業所で人間関係に悩んでいるなら、作業内容の違う事業所を見てみるのも一つの手です。
「A型はやめとけ」と言われて揺れている方へ
人間関係がつらいと、ネットで「A型事業所」と検索したときに目に入る「やめとけ」という言葉が、余計に心に刺さることがあります。
でも、少し立ち止まって考えてみてください。あなたが今つらいのは「A型事業所という仕組み」のせいでしょうか。それとも「今の事業所の環境」のせいでしょうか。
事業所によって雰囲気はまったく違います。一つの場所が合わなかったからといって、A型全体を諦める必要はありません。
関連記事: 「就労継続支援A型はやめとけ」と言われる理由と札幌のA型事業所が現場の本音でお答えします
まとめ:あなたの「つらい」は、間違っていない
A型事業所で人間関係がつらいと感じること。それは、あなたの心がきちんと機能している証拠です。
「我慢する」だけが選択肢ではありません。物理的に距離を取る。休憩時間の過ごし方を変える。信頼できる人に相談する。事業所を変える。どれも正しい選択です。
札幌の冬は長く、外に出づらい季節が続きます。だからこそ、毎日通う場所の環境は、あなたの心の健康に直結します。
どうか、一人で抱え込まないでください。
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「今の事業所の人間関係がつらい」「環境を変えたい」──そんなお気持ちだけで構いません。まずはお気軽にご相談ください。
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